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金丸染工「金丸絵美」さんにインタビュー!もう、消えてしまった!?金沢の風情や加賀友禅の現状と未来とは

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ISHIKAWA19の編集長です。 一児の母でもあります! 好きなことは空手、着物でお出かけ、マッサージ(するのもされるのも好き)、旅、アート、音楽・・・など、多趣味です! 好きな言葉は「ケ・セラ・セラ」
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 加賀友禅が似合う女になりたい!サティー(@mama_satty)です。

今、加賀友禅を守りながらも未来に繋げるために日々、修行&奮闘されている職人さんがいます。


金丸 絵美(かなまる えみ)さん。


実は以前、加賀友禅をコンセプトにした金沢市内のホテルの特集の記事を書かせて頂いてたんですが、取材した中で唯一、手書き加賀友禅の作品があったゲストハウス「YU-ZEN TABI-NE」さんの中の作品を手掛けられた方です。

今回のインタビューでは絵美さんから

  • ご実家の「(有)金丸染工」について
  • 絵美さんのお仕事や家業を継ぐこと
  • 加賀友禅の魅力とは
  • 実際、加賀友禅の後継者不足の生産高の問題はどの位深刻なのか!?
  • 加賀友禅と歩む未来

について、絵美さんの想いや加賀友禅の現状を現場から聞かせて頂きました。

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​金丸染工4代目となるか−現在、見習い修行中の金丸絵美さん

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左: 金丸染工三代目 金丸 修一さん  右: 長女 金丸 絵美さん

サティー: はじめまして!早速ですが、金丸 絵美さんご自身の活動やご実績などについて教えてください。

絵美さん:  はい、現在は「下絵」と言う一番最初の工程と色をつける「彩色」と言う工程の部分でまだ、見習い中の者ではありますが、5年目になります。実は、技術面だけでなく、実家(有)金丸染工の新商品開発や営業、SNSや様々な媒体で広報活動などもしております。

あ、ちなみに以前は普通の会社員をしていました。笑

サティー: 結構、幅広い業務をされているんですね!そして、一旦社会人なってから家業を継ぐ決心をされたようですが…お父様からのご希望なのでしょうか…?あ、ご兄弟とかはいらっしゃいます?


絵美さん:兄弟は私の他に二人いて、誰も継ぎたいと言う者はおらず…家が家なので何となくそういう事は誰かがやらないとみたいな空気は感じたりはしていましたが、 父からは家業を継ぐように頼まれた事は全然、無かったです

実は「決心」というより、私の場合はお家の「お手伝い」のようなところから始まって、実際にやってみるとどんどん面白くなっていったのと、やはり年齢を重ねるにつれて、何となく家そのものが途絶えてしまうのはすごく悲しい事だと思ったんです

サティー:そうですね、歴史あるお家が自分の代でなくなってしまうのはとても寂しいですよね。

では、もう少し、金丸染工さんの歴史ついても教えて頂けますか?

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金丸染工の歴史はナント、100年!

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​入り口の看板 Photo by Minako Obata

絵美さん: はい、 金丸染工は1919年(大正8年)、私の曽祖父 金丸時三郎が創業しました。初めは染物屋として暖簾やシルク以外の素材の着物など何でも染物は取り扱っていました。それが、はっきりとした理由はわからないのですが、第二次世界大戦のあとに「加賀友禅」を中心とした事業に切り替わっていきました。

初代が金丸 時三郎父がその3代目となります。

サティー:100年もの長い歴史があるんですね!もう、1世紀も続いているなんて、すごい!!

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実は、オンライン会議でインタビュー中だったりする!の図  photo by Minako Obata

絵美さん:それと、現在の金丸染工は工房でありつつも、悉皆業(しっかいぎょう)と言うのも営んでいます。

サティー:ん?しっかいぎょう??って、何でしょうか?

悉皆業(しっかいぎょう)とは

一枚の布(=反物)が着物に仕上がるまで数多くの工程があり、その各工程の職人さん達の間を取り持つプロデューサー・ディレクターのような仕事。

「しっかり」の語源とも言われている。(引用:金丸染工 公式HP



絵美さん:問屋さんと作家さんの間に入って繋ぐ、ディレクターのような役目でもあると言うところです。伝わりますかね??

サティー:(細かい部分はよくわかんないけど)ディレクターでわかりました!笑 ありがとうございます。汗 

では、絵美さんが実際に作品を作られているときに面白いと感じる部分や加賀友禅とは何か…についても、お聞きしたいです。
      

 

絵美さんにとって加賀友禅とは…

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工房にて Photo by Minako Obata

サティー:絵美さんにとって加賀友禅とは何でしょうか?

絵美さん:作品を作るとき、やってもやっても「完璧」にならないのですが、そこにやりがいを感じているのではないでしょうか….。また、家庭環境から沢山の美しい美術品を見て育ってきましたが、私にとって加賀友禅とは何よりも美しく、心動かされ、感動するものです

サティー: ..加賀友禅って私もすごく綺麗で、知れば知るほど奥深いなって思いますが、絵美さんだからこそ感じられている、特別な想いを感じさせられますね。

金丸染工さんは絵美さんのような(後を継がれる身内の)存在が当たり前ではなく、厳しい現状もありますよね。金沢市で伝統工芸品の製造や販売などに従事する人が、2018年度末までの過去10年間で約700人減少して約2300人になったと言うニュースを目にしました。

加賀友禅の場合はどうでしょうか?

 

加賀友禅の後継者不足や生産高低下の問題について、どのように感じていますか?

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工房のすぐ横に流れる「冬の浅野川」 Photo by Minako Obata

サティー:日本の伝統工芸全般における後継者不足や生産高低下の問題がありますが、特に加賀友禅においてはこの問題をどのように捉得られていますか?周りの作家さんなどの近況も含めて、お聞かせ頂けますか?

絵美さん:後継者不足も生産高低下も深刻な問題です本来は継いで欲しいと考えているはずの作り手も食べていけないからやめたほうがいいと言うくらい…。最近すごく、悲しかったのは金沢市内で唯一、本当の川で「友禅流し」の伝統技法を続けられていた荒木順一さんが廃業されてしまった事です。

加賀友禅の歴史を語るのに欠かせない大切な職人さんであり、すごく尊敬していました。

サティー:ええーーーっつ!?それは、知らなかったです。ごめんなさい涙 それにしても、悲しすぎますね。
友禅流しと言えば、金沢の浅野川では情緒ある風景の一つですね。それがもう、みられなくなってしまったなんて…. 考えられる原因はありますか?

友禅流しとは
  • 加賀友禅の工程の中のひとつ
  • 染色後の糊や余分な染料を水のきれいな川で洗い流すというもの
  • 川の水が冷たいほど繊維が締まり、思ったとおりの色に染め上げることができるという。そのため、友禅流しは冬の金沢の風物詩でもありました。

絵美さん:はい、荒木さんは黒留袖の専門の作家さんだったんです。近年、結婚式で黒留袖を着る人自体が少なくなってしまって…それは原因の一つかと思います。

 
サティー:なるほど。時代と共に人々の生活様式や価値観が変わっていって、需要が激減してしまったんですね。

絵美さん:また、私が考える後継者不足の原因の一つとして、加賀友禅は見習い期間に7年*は修行を積まないと「落款ラッカン登録」を行えませんでした。他の伝統工芸より「作家」までのハードルが高い事なども考えられます。

※修行期間は近年、5年に改定されました。

サティー: 自分が加賀友禅作家への道をリアルに考えると、7年は長すぎですね。大学に行くと考えても4年とかですし….(そんな背景があって、「作家さん」として絵美さんのお名前をいただけなかったのかー!)こんなに長い見習い期間にする意味は一体…メリットは何でしょうか?


絵美さん:実はこの長い修行期間および、「落款登録制度」は加賀友禅独自の制度でバブル期前後にできた様です。…それによって、加賀友禅は高い品質を守ってきたというのはあるのですが、

 一方で、同じ伝統工芸でも「九谷焼」なんかは今は見習いでもどんどん、市場に出て、積極的に販売や広報活動を行なっています私はこの動きが加賀友禅にもできたら良いなと思っています

 実際、私は家の立場を利用させてもらって、見習いのうちから前に出てきました。どこかに「弟子入り」してしまうと、こんな勝手な事は許されないので批判もありましたけど、未熟な私を応援してくれた人も沢山いることがわかりました。

サティー:今だにやりずらい状況もあるかも知れませんが….私も、めちゃくちゃ、応援したくなります!


絵美さん:今だに家の中でも私のやっていることをすべて認められてはいませんが、今は大分色々と吹っ切れました。笑 私は若いからこそ、生まれる自由な発想力や行動力はあると思っていて、例えそれが未完成のままでもファンは応援してくれるという事はわかりました。

だから、何事もやってみないとわからない伝統工芸は歴史を守ることも大事ですが、時代に合わせて革新を遂げてきたからこそ今も、ここにあると考えています


サティー:お家の中でもまだ、認められていないとは…それでも前に出てこられた絵美さんの行動力が素晴らしい!!伝統工芸といえど、時代の変化に合わせた変化はどこかに必要ですよね。


絵美さん:有難うございます。また、生産低下に関しても深刻な問題ですせっかく、技術を磨いてきた実力のある作家さんでも活躍できる場が中々無いのは本当に残念で仕方がありません

また、加賀友禅はやはり着物が一番だとは思いますが、加賀友禅が現代の生活とはあまり、合わなくなってしまっていると感じています。

 

サティー:ご自身が作家さん見習いでもあり、ディレクターの役割もされているから余計に悔しいだろうなと思います。私も着物は好きで、若い頃からちょっとお出かけする時や人前に立つ時には着ている方ですが、普段洋服で過ごしていると着るのはやはり面倒だったり、動きにくかったりとかありますね。

着物に関してはすごく、難しいところですが…加賀友禅を通して、こんな未来を実現したいなというご希望などありますか?

 

加賀友禅を通して、実現したい未来はありますか?

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PCからで恐縮ではあるが…和気藹々としたインタビューの様子 photo by Minako Obata

絵美さん:私は加賀友禅を時代に合わせた、新しい表現ができればなと考えています。例えば、ゲストハウスの襖は本当に多くの方々からお褒めの言葉を頂いてとても嬉しかったです。だから、やはり、加賀友禅には人の心を豊かにさせるそんな、力があると感じました。


 私は「手染め」は大好きです人の手の仕事には人の想いが乗る気がします。人を感動させたり、気持ちを動かすにはやっぱり人の「手仕事」な気がします。しかし、一方で、現代のプリントやパソコン技術などの発達はうまく活用するなどして、新しい方法で加賀友禅を楽しんでもらえたらとも考えています。

   世界はどんどんグローバル化し、AIがこれまでの仕事を取って代わるような時代ではありますが、だからこそ手仕事の暖かみや素晴らしさを感じて再認識をしてくれる人のニーズも高まるのでは無いかと思っています

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「糊置」 

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「加賀友禅の色」photo by Minako Obata


 また、加賀友禅は無くしたらいけない物だと価値を感じてくれたり、私の動きに賛成して応援してくださる方も多いのですが、一方で、応援しにくいという率直なお声もあります。

 だから、まずは私自身が加賀友禅で守るべきところ、変えるべきところの分別をしっかりとできるようになり、加賀友禅を通してどんな社会の役割をになっていけるかを考えたいです


サティー:有難うございます。私自身、絵美さんの言葉で加賀友禅と自分には何ができるかなど….以前より深く考えさせられました。それでは最後にメッセージを一言、お願いします。


『加賀友禅の力で生活に潤いを、心に豊かさを』

 

(有)金丸染工の基本情報

名称 (有)金丸染工( カナマルセンコウ )
所在地 石川県金沢市材木町29-4
営業時間 9:00~17:00 
定休日 日曜
お問い合わせ  公式HP
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